2.プリント基板への部品の取り付け


下準備1.ハンダ付け作業の前の下準備

小型のニッパー,ラジオペンチが必要です.半田ごては15Wから20W程度のもの(出力が大きすぎるとIC等の素子をいためてしまいます),ハンダは1mm径以下のヤニ入りハンダを使用するのがベターです(太すぎると半田を盛りすぎたりブリッジの原因になります).ハンダ吸い取り線も手元にあると良いでしょう.

初めにハンダ付けの練習をしておくのが良いかもしれません.「イモハンダ」,「テンプラハンダ」を避けるにはチョッとしたコツが必要です.ハンダ付けに慣れていない方は,一度ウェブ上で「ハンダ付けのコツ」を調べてからハンダ付け作業に取り掛かった方が良いでしょう.

半田ごての先を突き出たリードの根元とスルーホールの両方に触れるように当て,イチ,ニイとゆっくり数えてから糸半田の先をリードの根元にチョンと当てます(半田ごての先ではありません.).半田がスーッと染み込むような感じで溶ければO.K.です.半田の先が離れた後,こて先を離します.もう片方も同じ要領でハンダ付けして下さい.最後に,ニッパーを使って突き出たリードを2本とも根元から切り取ると,一つの抵抗のハンダ付けは完了ということになります.このとき,ハンダ付けの良し悪しを確認しておきます.半田がコロンと盛り上がっているようなら,イモハンダの可能性があります.こてを当て直して下地と馴染むようによく溶かして下さい.半田の盛りすぎはいけません.また,長い時間半田づけ作業を続けていると,こての先に黒いカスのようなものがつくことがあります.これは半田ごてが熱くなりすぎている証しですから,ときどき,こて先を水を染み込ませたスポンジにつけて冷やしながらハンダ付け作業をします.

下準備2.抵抗のカラーコードの理解

「お助けパック」に入っている抵抗は,本数の多い何種類かはそれぞれ別のビニール袋に入れて分けられていますが,数が少ないものは数種類の抵抗がひとまとめになっています.それらの抵抗はカラーコードを頼りに抵抗値を読み取るか,テスターなどの計測器を使って抵抗を測らなくてはなりません.そうして抵抗を種類別に仕分けしてから半田付け作業に取り掛かります.そこで,作業に取り掛かる前にカラーコードのことについて少し勉強しておきましょう.

寸法の小さな抵抗では数字や文字を書くスペースがありませんので,抵抗の値と誤差をカラーコードと呼ばれる色の帯(色帯)で表すことにしています.誤差が±5%〜±20%の抵抗の場合は4本の色帯が,そして金属皮膜抵抗など±1%や±2%の誤差のものは5本の色帯が使われます.

色帯の密度の高い方を左側において抵抗を見たとき,左から順に第1帯,第2帯・・・というように呼びます.4色帯表示では,第1帯と第2帯が二桁の数字を,第3帯が10の乗数を,そして第4帯目が誤差を表す約束になっています.5色帯表示の場合は,第1〜第3帯で3桁の数字を,第4帯が10の乗数を,そして最後の第5帯目が誤差を表します.どの色が何の数字に対応し,どのように抵抗値を表すかは下の表と図を参照して下さい.


第1帯〜第3帯(第1帯〜第4帯)で使われるカラーコード

数値

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

-1

-2

第4帯(第5帯)で使われるカラーコード

数値

±1%

±2%

±5%

±10%
無色
±20%

2

2

101

±5%
220Ω±5%

5

1

103

±5%
51 000 Ω±5% = 51 kΩ±5%

Step 1 - メイン基板のハンダ付け作業

部品は抵抗,積層セラミックコンデンサ,トランジスタ,IC,LED,電解コンデンサなどの順で,小さなもの,高さの低いものから順にハンダ付けをしていきます.これは後からハンダ付けしにくくならないための順番で,それ程厳密なものではありません.後からつけ難くならないように注意して付けていって下さいということなのです.

抵抗とコンデンサの入った袋を開き,330Ω(R29,R30)と16KΩ(R21, R31) の抵抗を別にしておいて下さい.これらの抵抗は今は使いません.

まず,メイン基板からハンダ付けしていきます.文字の書いてある面に部品をハンダ付けしていきます.

I. 抵抗の取り付け

R21,R29,R30,R31と書かれているところを除きすべての抵抗を取り付けます.

R**と書かれている(**には数字が入っています)長い長方形の部分が抵抗を付ける場所,そしてR**の近くに描かれている数字が付けるべき抵抗の抵抗値です.抵抗の足(リード)を両方とも直角に曲げて基板と抵抗本体が接触するまでしっかりと穴(スルーホール)に差し込み,反対側に突き出たリードを両方とも外側に開いて抵抗が動かないようにして,ハンダ付けします.

II. コンデンサの取り付け

0.1uFの積層セラミックコンデンサ(青色をした小さなコンデンサで 104 と書かれています.10×104pF で 0.1uFとなります.)を付けます.取り付ける位置はC*と書かれた楕円形の場所です.0.1u という数値も一緒に描かれていますから間違うことはないでしょう.同様に1000pF(C7,C8,C9)のセラミックコンデンサ(薄茶色,102(10×102pF)と書かれています)も取り付けます.これらのコンデンサは抵抗と同じように,取り付けの向きはありません.どの向きに取り付けても回路上は問題がありませんが,通常は後でコンデンサに描かれている数字が見やすいような向きにします.

つぎに,電解コンデンサの100μFと4.7μFを付けましょう.電解コンデンサには極性がありますので注意が必要です.マイナス極側には必ずコンデンサの上から下まで極性表示を示す「色違いの帯」が描かれる約束になっています.この極性表示を確認の上,極性を間違えることなく取り付けて下さい.取り付ける場所は100uとか4.7uとかが描かれている円形の部分です.円の外側に「+」の記号が描かれていますので,この記号の側にプラス極のリードが入るように取り付けて下さい.

※新品の電解コンデンサではリードの長さでも極性を識別できます.リード線が短い方がマイナス極です.したがって,長い方がプラス極ということになります.なお,アルミの電解コンデンサは極性を逆に付けたまま使用していると,回路がうまく働かないばかりでなく,内部にガスが発生して爆発しますので注意が必要です.

III. トランジスタ・LED・FETの取り付け

今度は,トランジスタとLED(Light Emitting Diode,発光ダイオード),FET(Field Effect Transistor,電界効果トランジスタ)を取り付けてみましょう.これらも取り付け方向が決まっていますから注意です.

トランジスタ

まず,トランジスタからハンダ付けします.ここで使用するトランジスタ2SC1815GRのピン配置は図のようになっています.E(エミッタ),C(コレクタ),B(ベース)というピン名でそれぞれ区別するのが慣わしになっているのですが,これらを基板上のE,C,Bと書かれている箇所にそれぞれできるだけ深く挿入し(できるだけ高さが低くなるように)ハンダ付けして下さい.基板上ではトランジスタを上から見たときの形と同じ半円状の印が描かれていますから,それに合わせてピンを順番に挿入すれば間違えることは無いでしょう.

LED

つぎに,LEDを取り付けます.LEDの取り付けには注意が必要です.2本のリードをもつ赤い色の素子がLED(TLUS114(F))です.LEDは何故か慣例で2本のリードをそれぞれアノード(ANODE,陽極),カソード(CATHODE,陰極)と呼びます.正しく動作させるためには,アノードがカソードよりも高い電位になるように電圧を印加しなければなりません.新品の状態ではアノードのリードはカソードのリードよりも長く作る約束になっていますので,それを頼りに長いリードをLEDと書かれている円形のAのスルーホールに入るように,そして短いリードがCと書かれているスルーホールに入るように差し込んでハンダ付けします.取り付けた後,LEDの平らな側面の方を上から眺めてシルク印刷の平らな線が見えるか確認します.向きを反対にして取り付けても壊れることはありませんが,あとでLEDが点灯しない結果となり困ることになります.

FET

さらに,FETを取り付けます.このキットに入っているFETは3本のリードをもつ平たい四角形の黒い素子で,金属の放熱板がついています.3本のリードにはそれぞれゲート(G),ソース(S),ドレイン(D)という名前がついています(左図参照).基板にこの記号が書かれている場所があるので,そこに対応するようにFETを挿入します.基板上のFETの記号を見ると,放熱板にあたるところが細長い四角で示されているので,それを目印にすれば方向を間違うことは少ないでしょう.

IV. ICの取り付け

IC

いよいよICの取り付けです.LMC660CNとTC74HC08APは,上から見ると角に近いところに丸印(1番ピンマーク)があります.この丸印をシルク印刷の丸印に合わせて取り付けて下さい.ピンが開いていてスルーホールに入り難い場合には,机の上などの平らな面に片側のピン全部がすべて接触するように当ててピン全体を根元から内側に少し曲げてから入れるとうまく入るはずです.ピンは根元までしっかりと差し込んで下さい.半田づけは,対角線上にある端の2つのピンを最初に半田づけします.そして,ICが不自然に浮いていないかどうかをチェックして,もし浮いているようなら浮いている方のピンの半田を溶かしながらICを基板に平行になるように調節して下さい.力を入れすぎると基板を壊してしまうことがあるので注意しましょう.後は残りのピンをハンダ付けします.ピンの数が多いので,順序よくつけていかないとハンダ付けを忘れたピンが残ったりしますから気をつけて下さい.途中でコーヒーなどを飲まずに,一気にハンダ付けしてしまいましょう.

パワーMOSFET

パワーMOSFETモジュールの MP4212 は切り欠きのある方が1番ピンです.シルク印刷では長い長方形の端に四角い印のついている方が1番ピンの印ですから,それに合わせて取り付けて下さい.このICもピンを根元までしっかりと差し込んでハンダ付けします.

V. ディップスイッチの取り付け

ディップスイッチ1個も取り付けてしまいましょう.ディップスイッチは,ONと書かれている方が基板の外側にくるように取り付けます.

VI. 赤外線LED光量調整用抵抗の取り付け

R31,R21とR29,R30の抵抗をハンダ付けします.これらの抵抗はLEDに流れる電流値を調整する働きがありますので,赤外センサで受光する光の強さを変えたいときなどにこれらの抵抗値を変えます.Ver.4キットではR29とR30の1kΩの抵抗の代わりにXR29とXR30に330Ωの抵抗,XRP29とXRP30に1kΩ(102)の可変抵抗を取り付け,さらにXP29とXPV29,XP30とXPV30をそれぞれ導線で配線することで赤外線LEDの光の強さを可変抵抗で調整できるようにすることもできます.詳細は「上級編:可変抵抗でLEDの光の強度を調整できるようにする」を参照してください.

VII. コネクタの取り付け

メイン基板に取り付けるべき残りの部品はコネクタベース8個とタイニーマイコンを差し込むために使う2本のピンコネクタだけです.コネクタベース8個は基板と密着させてハンダ付けして下さい.

タイニーマイコンを差し込むためのピンコネクタも基板と密着するように取り付けます.

Step 2 - エンコーダ基板のハンダ付け

Ver.4のキットでは標準型と左右分離型の2種類のエンコーダ基板のタイプから1種類を選んで組立てを行います.ここでは標準型を例に組立てを行います.

最初にエンコーダ基板に部品を取り付けましょう.抵抗,コンデンサ,そして最後にフォトインタラプタを取り付けます.フォトインタラプタからはリードが5本も出ていますが,シルク印刷に描かれているとおりに差し込むだけです.部品は基板のシルク印刷面の側に取り付けてください.

できあがると図のようになります.

標準型エンコーダ基板

Step 3 - マイコン基板のハンダ付け作業

最後はタイニーマイコンキットの組み上げです.秋月電子通商販売の「AKI-H8/3664Fタイニーマイコンキット」も,梅澤無線電機販売の「テクニカル工房製TEC-ATR3664P キット」も基本的に組み立て方は変わりません.

前にも書きましたが,このキットでは抵抗の値,コンデンサの値がシルク印刷されていません.基板上に書かれているR○○とかC△△とか記号とそこに挿入すべき抵抗,コンデンサの値の対応リストとを見比べながら作業を進めなければなりません(step2で予習したカラーコードの演習問題みたいなもんですね).組み立て方は,タイニーマイコンキットに同封のマニュアルに詳しく書かれていますので,それに従って下さい.3点だけ留意点をあげておきましょう.

1点目はICソケットです.メイン基板のICは直付けでしたが,マイコンキットではICソケットを基板に半田付けしたあと,ICをソケットに差し込んで使うようになっています.ICソケットから半田付けを始めるようにして下さい.

2点目はピンヘッダです.キットでは最後にピンヘッダーを半田づけして組み立てが終わることになっていますが,このピンヘッダーはスルーホールの穴の数に合わせて途中から切断して使います.またマイコン基板に取り付けるときには,ピンの短い方を裏面から差し込んで半田付けします(長い方がメイン基板のピンコネクタに差し込まれるように).

3点目の留意点はマイコンキットとパソコンを接続するコネクタの部分です.これは使うマイコンキットによって異なりますので順に説明します.

秋月電子通商販売の「AKI-H8/3664Fタイニーマイコンキット」の方では,マイコンにプログラムを書き込むときケーブルを差したり抜いたりするので,RS-232C用のコネクタをしっかり固定しておかなければなりません.RS-232C用コネクタを基板に密着させて取り付けただけではぐらぐらしますので,写真のように短いビス・ナットで基板と固定して下さい.

梅澤無線電機販売の「テクニカル工房製TEC-ATR3664P キット」の方はこのコネクタがモジュラージャックになっています(下図左).マイコンボードとパソコンを接続するモジュラーケーブルが6芯ならば問題ありませんが,4芯の場合はモジュラージャックのピンを2か所ジャンパーする必要があります(下図右).使用するケーブルにもよりますが,キットに付属しているモジュラージャックの場合はこの処置が必要になるでしょう.ジャンパーするピンの詳細は説明書に記載があります.

また,モジュラーケーブルをパソコンにつなぐために,ケーブルの他端にDsub9Pメスコネクタをつけたストレートケーブルが必要になります.梅澤無線電機にて「TEC-ATR3664P キット用通信ケーブルキット」という商品名でケーブルとDsub9Pメスコネクタをセットにして販売しています.モジュラージャックのとめ具を手前にして下図左の向きに見た時,一番左の線がDSUB9Pの2番ピン,左から2番目の線がDSUB9Pの3番ピン,3番目の線はなし,4番目の線を5番ピンに接続します.さらにDSUB9Pの7番ピンと8番ピンをジャンパーします

補足として,プログラムを書き込むときのジャンパーピンの位置を下図右に示します.ただし,ロボットキットにはブートスイッチがあるので,このジャンパーピンを使うことはないでしょう.

最後に,ベース基板に組み上げたマイコンボードを差し込むと完成です.


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